防災情報の統合解析・高度活用技術に関する研究

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令和2年7月豪雨における浸水エリア(山形)と浸水建物棟数(速報)

更新履歴

  • 令和2年7月31日 11:00 初版

連絡先

  • 防災情報研究部門/国家レジリエンス研究推進センター 田口仁、平春
  • 水・土砂防災研究部門/国家レジリエンス研究推進センター 酒井直樹

概要

2020年7月28日から29日にかけて東北や北陸に大雨が降り、最上川中流の氾濫等による浸水被害が発生しました。

初動期の災害対応では被害の全容把握が重要です。浸水した建物の数の推定は、被害を定量的に把握することが難しい初動期において役立つことが期待されます。

7月28日から29日にかけての山形県における大雨における浸水建物棟数の推定を、国土地理院が公開している浸水推定図と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による「だいち2号(ALOS-2)」の浸水エリア抽出結果を使って実施しました。

既に、令和2年7月豪雨における九州エリアや岐阜エリアの浸水建物数を推定して報告しています(リンク)。そして今回の山形における浸水被害は、梅雨前線による大雨が要因であることから、これまでの令和2年7月豪雨と一連の災害と判断できます。そこで、これまで防災科研クライシスレスポンスサイト(被害状況:推定浸水建物数)に掲載した情報に対して追加更新を実施しました。

建物棟数の推定には、NTTインフラネット株式会社のGEOSPACE電子地図の建物形状のポリゴンデータを使用しました。

①国土地理院 浸水推定図

国土地理院では、収集した画像等と標高データを用いて、浸水範囲における水深を算出して深さを濃淡で表現した地図を作成しており、浸水エリアをGISデータで公開している(リンク)。

  • 最上川水系最上川(2020年7月29日20時作成)

②レーダ衛星だいち2号(ALOS-2)による浸水想定域抽出結果

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、レーダ衛星だいち2号(ALOS-2)を使用して緊急観測を行い、浸水エリアを抽出している(リンク)。

  • 7月29日12:09観測

2つのデータを統合した浸水建物棟数の推定

国土地理院の浸水推定図(①)は、特定の河川において地形情報、ヘリ情報、SNS情報を用いて推定している。だいち2号による浸水想定域抽出結果(②)は網羅性があるものの、ある時点を切り出した情報である。これらのデータはいずれも、最大の浸水エリアを網羅的に示しているわけではない。そこで、これらのデータを統合し、同様に浸水エリアに入る建物棟数を推定した。

図1:すべての浸水エリア抽出結果の重ね合わせ(山形エリア)(クライシスレスポンスサイトより)
青色:国土地理院浸水推定図、紫色:レーダ衛星による浸水エリア、

浸水推定図による浸水エリア外にも衛星データによる浸水エリアが抽出されていることがわかる。

図2:市町村別の浸水建物棟数の集計結果(山形エリア)(クライシスレスポンスサイトより。初期表示は九州エリアのため、ページ左の説明文中にある「山形」をクリックすることで移動可能)。

図3:市町村別の浸水建物割合(浸水棟数/全建物数)の集計結果(山形エリア)(クライシスレスポンスサイトより。初期表示は九州エリアのため、ページ左の説明文中にある「山形」をクリックすることで移動可能)

大石田町及び村山市で浸水した建物棟数が比較的多い一方で、浸水建物割合からは、大蔵村は浸水した建物の割合が比較的多いことがわかる。

推定した結果はエクセルでダウンロードが可能である(リンク)。なお、本データは入手可能なデータを用いて浸水エリアを統合しているが、すべての浸水エリアが網羅できていない点に注意されたい。

図4:市町村別の浸水建物棟数の集計結果(九州、岐阜、山形の各エリアを1つにまとめている)(クライシスレスポンスサイトより)

これらの浸水エリアの情報から、山形県における浸水した建物の数は1,562棟と推定された。

さいごに

初動対応では被害の全容把握が重要です。国土地理院の浸水推定図、網羅性があるレーダ衛星による浸水エリア、ほかの情報を効果的に組み合わせ、浸水建物数や曝露人口の推定など、初動対応における被害状況の把握に資する情報プロダクツの研究開発を進めてまいります。