常総市に大打撃を与えた鬼怒川決壊による水害からほぼ半月がたちました。被災地の復興はまだ長い道のりがありますが、これから涼しいシーズンに向かうので、まだましなほうなのかもしれません。私が調査した一番ひどい水害は1982年7月23日に発生した長崎水害でした。これは梅雨の本当に末期に発生したので、災害後に夏本番となり、遠慮会釈なく照り付ける猛烈な夏の日差しと、300名近い死者を出した大規模な土砂災害との闘いは、壮絶なものがありました。街の中心部をほぼ軒の高さで流れ下った洪水は、観光名所で知られる眼鏡橋を崩壊させ、市の商業地区にも甚大な被害を与えました。もっとひどかったのは山間地の集落で、最上部のところでは集落が跡形もなく貯水湖に飲み込まれているところもありました。斜面の美しさが際立った街だけに、その被害は壮絶なものでした。
常総市でも最初は濁水でどろどろになったので、とにかく泥を掻き出す作業にもっとも労力が注がれたと思いますが、市役所からは消石灰や消毒液など、自宅周りや内部に散布するものが配布されています。下の写真はその一部です。ほぼ30年前の1986年に台風10号がもたらした豪雨で決壊した小貝川の水害では、当時の下館市の約4分の一を冠水させたといわれています。当時私も被災地調査に来たのですが、たくさんの畜舎が被害にあっていて、いたるところに消石灰がまかれていたのが印象的でした。側溝など、水がたまりやすいところでは蚊の発生が懸念されます。最も暑い8月よりも9月のほうが蚊が多いという話もありますので、石灰はまだまだ有効な衛生資源ですね。
家の中などで一番使われているのが写真にもある「ベンザルコニウム塩化物液」で、製品名ではオスバンとか、ザルコニンとかがつけられているものです。これを薄めて散布したり、拭き掃除に使うのが一般的です。塩化ベンザルコニウムというのは俗に逆性石鹸と言われるもので、細菌やカビなどに作用して殺菌力が高いのが特徴のようです。海面活性効果もあるのですが、一方で普通石鹸と混ぜると両方の作用が合わさって洗浄効果も殺菌効果も弱ってしまうようですので、使い方についてはよく説明を読んでからにしたいところですね。