12月11日のプロジェクトシンポジウムも無事終わり、ようやく2015年も年の瀬となりました。今年もいろいろな災害や事故がありましたが、来年はこれらの少ない良い年になることを祈念したいと思います。さて、2011年の震災以来、私たちの防災科研にもいろいろな地域防災に関するご依頼をいただくようになりました。これらを踏まえてここ10年近く市民防災を進めるための基礎技術に関する開発を地道に進めてきました。すでにいろいろなところで使われているeコミマップをはじめとするIT技術はその一つですが、一番肝心なのは地域自身が他にあまり頼らず自立的にいろいろな取り組みを進める能力を持つことです。私たちのプロジェクトでは当初これらをリスクのガバナンスという視座から整理し、なるべく多くのステークホルダー(関係者)が当事者となって参加する環境の整備が必要と考えてきました。しかし現実の社会はそう簡単ではありません。道具が整備され関係者が顔見知りになっても、物事はなかなか進まない、そういうところがいっぱいあるようです。
これを解決するには性格が異なる2つのアプローチ方法があるように思います。一つは制度的な枠組みをきちんと作ってしまい、それに従うことが規則であるような社会することです。法的な拘束を強め、違反するところには罰則さえ設けるというアプローチです。実際、道路行政や都市計画行政などはこのやり方です。建築行政や防火(消防)管理行政もその類と言えるでしょう。誤りを発見した場合にはペナルティが課せられるというのはあまりうれしくありませんが、はたから見ているとわかりやすく、ルールがきちんとしていれば文句も出にくいのが特徴でしょうか。
もう一つは取り組みに実効性を持たせられればご褒美がもらえる、いわばインセンティブが与えられている取り組みです。やらなければ何もご褒美はありません。しかし、やれば必ず何らかの評価はなされ、それによる恩恵は受けられるのです。何もしなければ罰せられはしませんが、褒められることもないという社会は、味方によっては罰則と大して変わらないかもしれません。
肝心なのはこれからの私たちの社会がどのような社会を目指して展開していくかということで、私個人としては前者のような社会よりも後者のような社会のほうが受け入れられるのではないかと思います。もちろん高齢化、少子化が進むので、「やりたくてもできない」地域や「やってもできない」地域が出てくるのは仕方ありません。ですので、決められた目標が達成できない地域を落ちこぼれにさせないような目配り、気配りが必要です。
地域防災においても地域の主体性、自立性がとても重要になっています。それを支えるガバナンス関係者の存在をさらに増やしていくには、参加することのメリットを目に見えるようにする必要が急務になっているように思います。たとえば国立大学があります。国立大学はどこの都道府県にもありますが、それが果たしてどこまで地域と連携して研究を進めているでしょうか。国立大学がどこでも同じ金太郎飴的な教育機関になるのではなく、地域特色をもっと強めた教育機関として地域に貢献できるようにするのに、防災や環境はよいテーマです。私たちが取りまとめているプロジェクトALL防災WEBの中にもたくさんの大学関係者がいます。今一歩取り組みを実効性のあるものに高めなければなりません。