熊本地震の被害は16日に発生したM7.3の地震(気象庁から「本震」と発表されました)によって、すでに14日に発生した地震による被害が拡大した形となり、多くの人的被害が発生しています。このパターンはこれまであまり注目されていませんでしたが、過去にも全くなかったわけではありません。最初の地震の時に次に発生する地震の規模や時期を特定するのは困難ですし、現在の科学ではこのような後追い被害の発生を予見することは不可能でしょう。だからこそ警鐘を鳴らす必要がありますが、いつまで、どこまで警戒すべきかもなかなか悩ましい問題です。
それでも被害を受けた建物の多くは耐震性に問題のあるものや、その立地する地盤が良くないところが圧倒的に多いのが現実ですので、まずは今ある建物の耐震性をさらに向上するための施策を一層進める必要がありそうです。建築物はそれを建てたときの規定に沿っていれば、その後基準が改定され耐震性の規則が引き上げられても、それを反映することは求められません。そのため「既存不適格」と呼ばれる建物が数多く存在します。これらをすべて強制的に耐震改修するのは困難ではありますが、耐震改修を促すための何らかのインセンティブを与えることは可能ではないかと思います。まず考えられるのは賃貸住宅の耐震性の問題です。熊本地震でも学生が済むアパートが倒壊し、たくさんの死者が発生しました。賃貸住宅はいうまでもなく「人に貸す」ための住宅ですので、持ち主が「自分で住む」ための住宅と違い、持ち主にリスク意識が低いのではないかという印象があります。建物は建てたときの基準に沿っているので、貸しても構わないだろうという論理では、努力して補強しようとか、改修しようとは思わないのではないかと推察されます。うがった見方をすれば、何とか建っているうちにできるだけ稼いでしまおうというオーナーも存在するのではないかと思います。その場合、耐震性を改善しなければ固定資産税を高くするというのも、考えられる戦略でしょう。
この考え方は分譲型の集合住宅(いわゆるマンション)でも同じことです。集合住宅の居住者が必ずしも区分所有者(オーナー)ではないので、毎年行われる総会で意思決定する時に、合意が難しくなるのがマンションの仕様変更や改善に向けた審議です。マンションはうまく維持すれば地域にとって重要な防災拠点にもなります。あまり取り上げられませんが、マンションの耐火性は広域延焼火災を食い止めるために大きな効果を発揮します。戸建て住宅ばかりの町では地震時の同時多発型の延焼拡大を防ぐ防災戦略がなかなか難しいところもあります。また、マンションが耐震性が高ければ、地域の備蓄基地ともなります。防災上多くの面でマンションは役に立つ防災資源です。ところが都心部では多くの地域でマンションは町内会ともよい関係が築かれておらず、なんとなく地域の厄介者になっているところがあります。マンションを生かすも殺すも地域の意思次第です。マンションの可能性を広げるような、防災戦略を今こそ創出しましょう。