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広報誌「リスク情報と地域防災」第12号 (2011.2.21発行) 特集:地域の安心・安全に役立つ e防災マップと分散相互運用環境に掲載された内容です。

分散相互運用環境とは?

このページは、広報誌「リスク情報と地域防災」第12号 (2011.2.21発行) 特集:地域の安心・安全に役立つ e防災マップと分散相互運用環境に掲載された内容です。

地域防に必要な災3つの「知」

 地域における防災力を高めるためには、さまざまな知識や情報を活用して災害リスクを理解共有した上で、自助・共助・公助が協働して取り組むことが大切です。

 地域の防災力を高める視点で、活用する知識や情報としては、「専門知」「自分知・地域知」「経験知」という3 つの知があります(図1)。「専門知」は行政や研究機関などの専門的な見地からの知識や情報を指します。「自分知・地域知」は、地域特性や災害文化です。「経験知」は過去に災害から受けた「知」であり、災害体験記録などがこれに当たります。

 こうした3つの知を最大限に活用して、自分たちが住む地域の特性や起こりうる被害を理解することが、協働して防災の取り組みを行うためには、重要な出発点となります。


図1 当研究所が考える、目指すべき「地域防災」の姿

活用可能な情報の公開

 それでは、これらの知識や情報を集めたり活用したりするためには、どのような仕組みが必要なのでしょうか? 

 近年、コンピュータやインターネットの急速な発達によって、私たちは多くの情報を容易に入手することが可能になりました。現在、国や自治体、大学や研究機関などが、災害や防災に関する情報(災害リスク情報)として、地震・洪水・津波・がけ崩れ・噴火など自然災害に関する観測・監視や予測、被害想定などたくさんの情報を公開しています。

情報の有効活用は困難な現状

 情報が有効活用できれば、例えば行政が公開しているハザードマップによって、専門家としての危険な箇所を参照しつつ、地域に密着して生活している住民の実体験に基づく危険箇所を重ね合わせた参加型の防災マップを作成し、より質の高い防災の取り組みに発展できる可能性があります。

 ただし、これらの知識や情報については、公開は進んでいるものの、紙媒体でしか公開されていない場合もあります。また、インターネット上で公開されているものについても多くは画像やPDFといったファイル形式となっています。そのため、利用する人が必要なデータを必要な部分だけ取り出したり、異なる情報を重ね合わせたり比較したりすることができません。また、公開している情報システムもまちまちで、他のデータとの連携が図られていないため、利用者が地域防災に必要な情報を組み合わせて活用するという仕組みになっていないのが現状です(図2)。

 つまり、公開されている知識や情報を利用者側で活用できる方式ではないため、防災の取り組みへの有効活用が難しい状況にあります。

 では、この課題を解消するために、すべての知識や情報を誰かが一元的に集めて管理するということが良いのでしょうか?現実的には不可能です。


図2 これまでのデータ利用環境


図3 分散相互運用環境によるデータ利用環境(理想)

分散相互運用環境-情報の有効活用が実現できる仕組み-

 そこで当研究所では、情報システムのデータのやりとりを行うインプットとアウトプットの部分、つまり情報システム間のインターフェースのやりとりを標準化し、情報システム間での情報のやりとりを可能にする“相互運用方式”による情報の公開および利用が可能な環境とすることを提唱しています。

 インターフェースとは「2つのものの間にあって、情報のやりとりを仲介するもの。またはその規格」を意味します。これを標準化することで、情報の発信の責任の下で情報を公開することで、利用側はインターネット上に分散している情報を、必要な項目と範囲で情報が利用可能になります。その結果、“誰もがすべての情報をどのシステム上でも利用できる環境が実現”することになり、情報を総体として一元的に扱うことができるようになります。

 情報システム間のインターフェースの標準化については、例えば地図データについては国際標準がすでに策定されており、国内ではJISになったものもあることから、やりとりのためのルールは既に存在していることになります。そのため当研究所では、情報の提供および利用を行うシステムは、国際標準のインターフェースに対応することで、情報の提供者と利用者の双方にとって、最適な情報利用環境を実現する方法として、「分散相互運用環境」を推進しています(図3)。

 このような情報利用環境が実現すれば、例えば自治体が公開しているハザードマップや被害想定図について、地域住民が自分の地域に必要な情報を取得して、1つの画面に情報を統合して参照できるようになります。さらに、それらを下敷きに自分の目線で調べた情報を重ね合わせて、知識や情報を容易に統合することが可能となるのです。

分散相互運用環境で出来ること

 当研究所では、防災の取り組みにおける「分散相互運用環境」の有効性を地域での実証実験を通じて明らかにしてきました。ここではこの仕組みを実際に導入し、行政と住民が利活用した2つの事例を紹介します。

(1)行政機関の情報と地域目線の情報とを統合

 とある市の地域では、まちあるきで住民目線のマップを作成し、eコミマップを活用して防災マップを作成しました。これに、行政から公開されている土砂災害の危険箇所の情報を相互運用方式で取得して重ね合わせを行いました。すると、行政のハザードマップが示している危険箇所(図4①)と、住民が危険箇所だと思っていた箇所(図4②)に相違点があることがはじめてわかりました。

 このように、行政など専門機関が作成した情報を、利用側の情報システムが相互運用方式で情報を取得し、地域住民がそれを下敷きに情報を重ねることが可能になったことで、情報(知)が統合され、新しい気づきや視点を得ることができます。例えば、住民が危険だと思った箇所が、なぜ行政機関の地図では危険とされていないのかを確認することで、地域住民にとって、地域の土砂の危険性についての新たな知識が生まれます。さらに、例えば地震の揺れやすさマップを相互運用方式で取得して重ねることで、揺れやすくて土砂災害の危険箇所である場所は、地震の際に土砂災害が発生する可能性があるということがわかり、専門機関の科学的知見も取り込みながら、より実効性のある対策が検討できるようになると考えられます。


図4 行政情報と住民の情報を重ね合わせた例

(2)相互運用により市民との協働を実現した行政災害対応支援システムの開発

 平時の取り組みだけでなく、災害対応の場面でも、相互運用環境は有効です。新潟県見附市では、2010年7月 7日に相互運用環境で情報を取得して判断・意思決定を行う机上防災訓練を実施しました。訓練では、外部のハザードマップ、市民からの投稿情報、避難情報などの市の判断・意思決定の情報を、分散して相互運用を行える環境を構築し、市と地域住民が協働して災害対応を行うシナリオで訓練を行いました(図5)。

 この訓練では、行政の災害対応支援システムと市民活動支援システムが存在し、それらのシステムが相互運用のインターフェースを有することで、情報のやりとりが可能となり、協働して災害対応を行うことが可能となりました。

 なお、2010年12月3日に新潟県三条市でも同様の実証実験を行いましたが、消防の情報システムとも相互運用して、災害対応を行う机上防災訓練を実施し、それぞれの主体が協働して災害対応を行うことが可能となりました。

 このように分散相互運用環境は、平時から災害対応時の幅広い段階で災害や防災に関する情報を最大限に活用でき、地域だけでなく社会全体の防災力の向上に寄与できる可能性がある極めて重要な情報利用環境であるといえます。


図5 住民情報を組み込んだ行政の災害対応システム(新潟県見附市)

分散相互運用環境-情報の有効活用が実現できる仕組み-

 当研究グループでは、社会還元加速プロジェクトの実証実験の一環として、全国の自治体等からハザードマップを募集しています。提供していただいた情報は、変換が可能な場合は相互運用方式で利用可能な環境を提供いたします。詳しくは、 こちらをご覧ください。

 災害リスク情報を有効活用し、地域の安心・安全に役立てていただくために、「分散相互運用環境」の実現に向けたご支援とご協力をお願いいたします。